地元での呼び方

「ムラウドゥイ（村踊り）」とか、「豊年踊り」と呼ぶ。

武術的身体表現の形態

武術的身体操作・表現の形態

我部祖河では「ボー（棒）」と呼ばれる棒術が披露される。棒は二人が対面で行う組棒とボウホウ（棒方）全員で行うスーマキ棒（総巻棒）がある。

武術的身体操作・表現の分類

■型の演武がある ■対面での打ち合い等がある ■その他

時期・場所

行事が行われる期日（旧暦）

村踊りは3年に1度の開催で、本来は旧暦8月6日メースクミ（前仕込み）、7日スクミ（仕込み）、8日ソーニチ（正日）、そして9日ワカリ（別れ）の4日間の日程

上演の場所

旧暦8月1日のティンダティ（手斧立て）御願では、高台の広場であるメーガジョーフェーにおいて、棒方の安全祈願を行い、その後に、組棒とスーマキ棒を行う。また旧暦8月8日村踊りの道ジュネーでは、かつて間切役人も出した旧家のクシヌヤ（後ろ屋／宮城家）で棒の奉納が行われる。本番の村踊りの最初と最後には必ずスーマキ棒と組棒が披露される。〔『名護市史　芸能編』〕

行事の目的・由来・伝承

行事の目的・伝播の仕方 （どのように伝承されるようになったか。）

我部祖河の棒がどのような経路をたどり、いつ頃区に伝わったかは明らかではないが、長老達の話によると、明治初期生まれの人達がすでに演じていたとのことなので、明治30年代には導入されていたと推測される。〔『名護市史　芸能編』〕

中断・再興の時期とその理由

○戦時中は1944（昭和19）年のみ中断したが、翌年には戦争の避難民の協力も得て、御願踊りが復活した。1946（昭和46）年には本格的に復活し、毎年行われるようになった。1987（昭和62）年からは、新生活運動と踊りての都合などから3年ごとに変更した。一時期、旧暦8月8日には御願のみを行い、その週の土曜日または日曜日に村踊りを行ったが、長く続かず、元の旧8月8日に上演するようになった。1960（昭和35）年頃から期間も3日間となった。〔『名護市史　芸能編』〕本年度は区民や参加者、指導者などの都合を考慮して、日曜日の開催となった。 ○棒は終戦直後の2～3年を除き、1950（昭和25）年まで毎年村踊りに演じられた。その後は、若い青年達の市街地への流出に伴い、伝統棒であるスーマキ棒や三人棒は相応の人数が必要なため自然に中断することとなり、組棒の数演目のみが奉納されるようになった。1978（昭和53）年頃、向上会のなかから自発的にスーマキ棒・三人棒の復活の話が持ち上がり、向上会会長らが大正生まれの棒方の中心的な長老の先輩方に詳しく聞き取りを行い、指導を受けて現在の伝統棒を復活することができた。その後、3年ごとの豊年祭で1984年～1990年まで継続し、一時中断するも2003年に再び復活し、現在に至っている。〔『名護市史　芸能編』〕

武術的身体表現（「空手」「棒」等）にまつわる由来、伝承や民話、説話など

我部祖河の棒がどのような経路をたどり、いつ頃区に伝わったかは明らかではないが、長老達の話によると、明治初期生まれの人達が既に演じていたとのことなので、明治30年代には導入されていたと推測される。〔『名護市史　芸能編』〕

当該行事における意味

行事の中での演武（舞）の位置とその意味（戦前、戦後、復帰後の変化）

『名護市史　芸能編』にもとくに記述はなく、聞き取りでもつまびらかでない。

組織・指導者・伝承方法

組織

組織としては「演芸部」があり、これは1978（昭和53）年からであり、それ以前は「豊昌会」と呼ばれていた。2003（平成15）年は、演芸部長を中心に3組の組長、地謡、舞踊、棒方等の責任者を選出して村踊りの取り組みについて話し合われた。メンバーは区長、評議員、老人会、婦人会、青年会、向上会の代表、踊り手の指導者数人、棒方の代表、書記である。村踊りの組織・取り組みについては、戦前から戦後初期は踊り方と棒方はそれぞれ独立した組織で、練習期間中の会計も別であった。〔『名護市史　芸能編』〕

組織の特化

■武術の部分に特化した組織がある（保存会設置　常設の保存会はないが、豊年祭では「棒方」として組織化されて活動）

各組織の役割等（戦前、戦後、復帰後等の変化についても）

○区長は総ての総括、演芸部長が現在は踊り手の面倒をみる（踊り手の確認、諸連絡）。評議員は来客の接待を行い、書記は練習時の接待、買い物、雑務及び会計を行う。向上会・青年会は当日の準備、片づけ等も担当している。婦人会は、女性踊り手の化粧や着付けの手伝い、オミヤでの飲み会の配布及び使用した衣装の洗濯を受け持つ。婦人会役員が衣装を仕分けし、その年の婦人会班長に配って洗濯を依頼する週間が婦人会の伝統で続いている。〔『名護市史　芸能編』〕現在でも婦人会が衣装の確認をして、虫干しなどをおこない、衣装合わせなどを行う。終了後は衣装の状態に応じてクリーニングに出したり、コインランドリーなども利用して自分たちで洗濯の対応をしたりしている。 棒方の組織は戦前から戦後初期は学校を卒業した男性で、年齢の決まりはなく構成されていた。2003（平成15）年段階では向上会員・青年会員を中心に、本人の希望により高校生、中学生も参加している。〔『名護市史　芸能編』〕 ○現在、向上会は数年前に事情により向上会自体がいったん解散したため、2年ほど前から再度向上会組織の立て直しをしている段階で、実質的に活動できるのは10名程度である。現状としては向上会には役員を置かないで活動している。青年会は組織としてあり、会員は20～30名程度である。

指導者の氏名（さかのぼるまで）

1983年頃に向上会会長だった新城盛康、会員の玉城清康、新城徹郎、また大正生まれの宮城源徳、前川源徳、古我知菊夫、宮城幸俊、宮城茂、宮城彦幸の方々、伊佐常忠、宮城幸一、上間良浩、宮城清志らがいた。「〔『名護市史　芸能編』〕

出演者の状況・条件（年齢・性別/戦前・戦後・復帰後）

出演者は、既述のように、戦前から戦後初期は学校を卒業した男性で、年齢の決まりはなく構成されていた。2003（平成15）年段階では向上会員・青年会員を中心に、本人の希望により高校生、中学生も参加している。〔『名護市史　芸能編』〕現在は青年会を中心に、高校生や中学生から選抜している。

稽古の仕方、期間

稽古のスケジュール（戦前、戦後、復帰後等の変化についても）

○3年ごとの豊年祭の練習期間は2ヶ月間である。棒方は向上会・青年会を中心に練習が行われ、スーマチ棒を行う時は、高校生や中学生まで参加させている。本番一週間前の旧8月1日のティンダティ御願の日には、踊り方、棒方が一堂に集まり、話し合いを行う。これ以降は、踊り手はプログラム順に地謡に合わせて順次練習する。棒方はこの日より8月8日（正日）の本番まで、毎日午後8時頃より2～3時間、公民館前の広場で練習を行う。〔『名護市史　芸能編』〕

稽古の場所（戦前、戦後、復帰後等の変化についても）

戦前から戦後初期は、棒方の練習場所はメーガジョーフェーであった。踊り方は区事務所（公民館）で行っていた。近年は双方ともに公民館のホールや舞台、公民館前の広場で練習を行い、会計も統一して一緒に行われている。旧8月1日はティンダティ御願の日で、高台の広場であるメーガジョーフェーにおいて棒方の安全祈願をするが、この日より旧8月8日の本番まで毎日午後8時頃より2～3時間公民館広場で練習をする。「スーマキ棒」「三人棒」「組棒」の各人の位置、演目、組み合わせなどは自然に話し合いにより決められる。〔『名護市史　芸能編』〕

演舞（武）構成

演武（舞）構成 （芸態）（現状を含む）

○棒は舞台芸能が始まる前に公民館前の広場で演じられる。棒の特徴は、とくに「スーマキ棒」と「三人棒」にある。「スーマキ棒」は一列縦隊から右回りに円を描き、終わったところで二組に分かれて、一方が左廻りに巻きに入る。他方は巻きの外周を右回りに取り囲み固める。そこで、一同で気勢を三度上げた後、巻いた一方が先頭より右回りにほどきながら外へ出る。その間、他方は外周を回る。ほどきが終了する間際に他方が左回りに巻きに入る。一方はほどきながら外周を回り、巻きをほどいたところで、一列となり、「三人棒」に入る。「三人棒」は三人縦隊で並び、横三人による組棒が演じられる。終了後、二組に分かれ、相対する者同士で棒を上段で合わせながら控えに入る。「組棒」は二人一組で演じられ、10組程の型が残っている。希望者があるときは「個人棒」を間に入れることもあり、最近では空手演武が入ることもある。演目の呼称は演じられる順番により「イチバンボー（一番棒）」「ニバンボー（二番棒）」、「サンジャクボー（三尺棒）」、「シー棒」等と紹介される。〔『名護市史　芸能編』〕 ○2023（Ｒ5）年の豊年祭では、舞台芸能が始まる前と終わったあとの2回、公民館広場で演じられた。最初に棒方全員による「スーマキ棒」、次に二名一組で演じる「一番棒」、「二番棒」、次に空手の演武（小学生女子・中学生男子）があり、そして「三番棒」、「個人棒」、組棒の「シー棒」が披露された。舞台芸能が終わったあとも同様の順番で棒術と空手の演武が行われた。我部祖河は棒が盛んだったところで、今回は27名の参加だったが、以前（20～30年前）は40～50名ほどで演武した。この棒方のメンバーは別行事で披露するエイサーの演舞なども兼ねている。

衣装・道具

衣裳・道具の名称と着方

棒の衣装・道具等については、戦前、戦後初期は上下肌着（襦袢、股引）に帯、ティーサージ（手巾）に素足であった。1983（昭和58）年の復活以後は、柔道着の上下に鉢巻（日本手拭い）、素足である。拍子に鼓、ドラ、戦前は宮城幸蔵によるガク（吶哨 ツォーナ）も加わっていたが、現在は吹奏者がいない。演目により三線が加わることもある。棒は六尺棒と三尺棒があり、戦前から戦後初期は各自で作っていたが、今では市販の建材を使用している。これらの衣装・道具は普段は公民館に保管している。〔『名護市史　芸能編』〕

衣裳・棒、他の用具の管理と時代の変化について（戦前、戦後、復帰後等の変化について）

衣装や棒は普段は公民館にて保管している。衣装・道具の変化は上記20の通り。〔『名護市史　芸能編』〕

衣裳・棒、他の用具の修繕や製作、購入の方法（担当、方法、経費など）

棒は大事な演武には硬くて折れにくい樫の木を用いるが、その他のものはメイクマンなどの量販店で購入したりしている。

棒など用具の材質（戦前、戦後の変化）

棒は演武に必要なものは基本、樫の木を用いている。

音楽

楽器の内容と呼称、各楽器の演奏者数と時代の変化について（戦前、戦後、復帰後など）

とくになし〔『名護市史　芸能編』〕

楽曲（戦前、戦後の変化）

とくになし〔『名護市史　芸能編』〕

課題

支援してもらいたいことや困っていること（今後の継承等課題等）

向上会（青年会の卒業メンバーで構成）が数年前にいったん解散していまい、活動が休止してしまった。今年度から向上会という名称をつかう許可を得て活動を再開したところ、呼びかけて10名ほどが集まって、区行事の応援として協力している。現段階ではとくに会長職は置かない形で進めている。

コロナで影響を受けたこと

コロナ禍で3年前は豊年祭が開催できず、豊年祭が6年ぶりの開催となった。

記録

文献、映像記録、古老の記録、プログラムや式次第など

■文献 名護市史編さん委員会編　『名護市史　本編8　芸能編』名護市　2003年〔445頁～472頁〕 我部祖河誌編集委員会『我部祖河誌』名護市我部祖河区　1999年 宜保榮治郎（沖縄県教育委員会『沖縄県文化財調査報告書第71集　沖縄諸島（中部・北部）の民俗芸能』） ■映像記録1981（昭和56）年、1987（昭和62）年、2003（平成15）年〔旧公民館最後の豊年祭〕、2008（平成20）年〔新公民館初の豊年祭〕のビデオテープ・写真あり