調査票結果
- 地元での呼び方
- 旧暦8月16日の午前中にチナヒチ(大綱引き)が、ムラの繁栄と豊作、人々の健康を祈願して行なわれる。当日はムラの人全員が東西のマールーに分かれて、それぞれ長さ30間(約54m)の雄綱と雌綱を引き合う。
武術的身体表現の形態
- 武術的身体操作・表現の形態
- 綱引き当日、東はカッチンヤマで女性達が踊ったり、若者が棒術を披露する。西はイリーカーンマーの広場で同様に踊りや棒術を披露する。また、綱を引く前と引いた後に槍に三角旗をつけた棒旗や棒術の演武が行なわれる。翌17日にもアトゥアシビ(後遊び)といって簡略化した行列を行なった後、東西それぞれの広場で棒術や踊りをして楽しむ。
- 武術的身体操作・表現の分類
- ■型の演武(舞)がある
■対面での打ち合い等がある
■その他( フェーヌシマ、ガーエー・マキ棒 )
時期・場所
- 行事が行われる期日(旧暦)
- 旧暦8月16日の昼に綱引き、17日の夕方にアトゥアシビを行う。明治の頃までは15日の夜に綱引きを行っていた。
- 上演の場所
- 綱引きの前に東はカッチンヤマ(市道沿いの雑木林)、西はイリーカーンマー(イリーガー前の広場)で棒術を披露する。綱を引く前と引いた後は、メーミチ(真栄里大綱引きの会場)で三角旗や棒術の演武がある。
行事の目的・由来・伝承
- 行事の目的・伝播の仕方 (どのように伝承されるようになったか。)
- ムラの繁栄と豊作、人々の健康を祈願して行なわれる。
- 中断・再興の時期とその理由
- 沖縄戦で途絶えたが、1947(昭和22)年に復興祝いとして綱引きを行った。
- 武術的身体表現(「空手」「棒」等)にまつわる由来、伝承や民話、説話など
- フェーヌシマは、昔、国頭地方との関連が強かった頃、国頭地方から導入されたという。
当該行事における意味
- 行事の中での演武(舞)の位置とその意味(戦前、戦後、復帰後の変化)
- 綱引き当日、東はカッチンヤマで女性達が踊ったり、若者が棒術を披露する。西はイリーカーンマーの広場で同様に踊りや棒術を披露する。また、綱を引く前と引いた後に槍に三角旗をつけた棒旗や棒術の演武が行なわれる。
翌17日は、ナーチャアシビ(翌日の遊び)といって簡略化した行列を行なった後、東西それぞれの広場で棒術や踊りをして楽しむ。綱引き後のガーエーの後に代表者による棒術が行われる。
組織・指導者・伝承方法
- 組織
- ムラ全体が東西のマールーと呼ばれる組に分かれて行事を行う。綱引きでは、ウチワキニン(相談役、東西3人ずつ)、ニンセーガシラ(青年頭、東西2人ずつ)、イーゴーガシラ(連絡係、東2人、西3人)、ジンガミ(会計係、東西2人ずつ)を選出して、綱引きに関する祭祀や行事を運営する。棒術などの稽古も東西のマールーに分かれて行う。
棒術はボーガミー(棒頭)や長老が指導する。 - 組織の特化
- ■武術の部分は専門の師匠がいる
- 各組織の役割等(戦前、戦後、復帰後等の変化についても)
- 11に同じ。変化はなし。
- 指導者の氏名(さかのぼるまで)
- 不明
- 出演者の状況・条件(年齢・性別/戦前・戦後・復帰後)
- 男性。
ナーチャアシビでは5歳から55歳までの男性。
稽古の仕方、期間
- 稽古のスケジュール(戦前、戦後、復帰後等の変化についても)
- 綱引きの10日前に稽古を開始する。
- 稽古の場所(戦前、戦後、復帰後等の変化についても)
- 西は旧家の大栄に集合後、公民館広場で稽古する。
演舞(武)構成
- 演武(舞)構成 (芸態)(現状を含む)
- 東西ともトゥマインクー(1人棒の型)、タンカーボー(2人が向き合って打ち合う)、サンリンボー(六尺棒1人と三尺棒2人の組み合わせ)、トゥンボー(4人棒の型)であるが、それぞれ型が異なるという。
牛若(2人、長刀と刀)、棒と十手、ヘーシマー(棒踊り、1972年に10年ぶりに復活したが、現在なし)
東:トン棒、クンの棒、三人棒、組棒、タンカ棒 長男へ チーグ、棒ーなぎなた
西:トン棒、津堅棒、三人棒、泊棍組棒、タンカー棒 長男へ チーグ、棒対なぎなた - 集落以外での披露の有無
- ■その他(テレビ番組に出演)
衣装・道具
- 衣裳・道具の名称と着方
- 雄綱は赤鉢巻、雌綱は白鉢巻 羽織(緑)、襷、脚絆
棒術は上半身裸、白いズボンに黒の地下足袋を履く。
棒旗は黒字の入道頭巾を被り、額に兜の前立てのような飾りをつける。顔は眉や目に隈取を施し、髭を描く。白のワイシャツとズボン、上に黒字に赤い縁取りのウッチャキを羽織る。黒の地下足袋を履き、ゲートルを巻く。 - 衣裳・棒、他の用具の管理と時代の変化について(戦前、戦後、復帰後等の変化について)
- かつては棒を中柱に括りつけて保管した。
現在は各マールで管理・保管している。東は屋号:仲門のアサギ、西は屋号:大栄敷地内の大殿内と呼ばれる建物で保管している。 - 衣裳・棒、他の用具の修繕や製作、購入の方法(担当、方法、経費など)
- 東西のニンセーガシラが旧暦7月7日に衣裳等の虫干しを行う。その後、綱引き2日前までに道具類の補修を終えておく。綱引き終了後、ジンガミが会計報告を行い、その時に次年度買い替える道具について協議する。
経費は自治会からの補助金、寄付金、住民の負担金によって賄う。 - 棒など用具の材質(戦前、戦後の変化)
- 不明。
音楽
- 楽器の内容と呼称、各楽器の演奏者数と時代の変化について(戦前、戦後、復帰後など)
- 銅鑼2人、太鼓2人、ほら貝2人(以上男性)、チジン多数(女性)
- 楽曲(戦前、戦後の変化)
- 特になし。
課題
- 支援してもらいたいことや困っていること(今後の継承等課題等)
- 若者が少なく後継者不足が課題である。コロナ感染収束後も開催できるか心配である。
- コロナで影響を受けたこと
- 新型コロナウイルス感染拡大により、2020年から22年まで綱引きを中止しているため、棒術を披露する機会がなくなっている。
記録
- 文献、映像記録、古老の記録、プログラムや式次第など
- ■文献
■映像記録
『季刊 まつり(第29号)』(まつり同好会/1977年)pp.29-53
『社会学関係ゼミナール報告(第8集)』(明治大学村武ゼミナール/1972年度)
『糸満市史(資料編13村落資料-旧高嶺村編-)』(糸満市教育委員会/2013年)pp.269-346
映像:平成6年度糸満市民俗文化財映像化事業「真栄里大綱引き・先祖とともに活きるムラ-真栄里-」対米請求権地域振興事業助成金補助事業(糸満市教育委員会/1994年)東・西各120分、ダイジェスト版40分他多数


