調査票結果
- 地元での呼び方
- 「豊年祭」という。
武術的身体表現の形態
- 武術的身体操作・表現の形態
- ボーフイ゜(棒振り)という。
- 武術的身体操作・表現の分類
- ■対面での打ち合い等がある
時期・場所
- 行事が行われる期日(旧暦)
- 旧暦6月に「豊年祭」があり、その日に棒術を行う。日取りを選ぶ。
- 上演の場所
- 公民館前の路上で行う。
行事の目的・由来・伝承
- 行事の目的・伝播の仕方 (どのように伝承されるようになったか。)
- 農業の収穫を感謝し、祝う行事。
- 中断・再興の時期とその理由
- コロナが流行した2020年から2022年まで棒術などの芸能は中止されたが、2023年から再開している。中止の間も、村の神女らによる豊年祭の祈願だけは続けていた。他に豊年祭が途絶えたことはないと思う。中止期間中にも、住民から長い間やらないと棒や踊りを忘れてしまうのでやってくれという要望はあったが、この時期に実施するのは難しかった。
- 武術的身体表現(「空手」「棒」等)にまつわる由来、伝承や民話、説話など
- 由来についての伝承は特に聞かない。新里の棒は川満など他所のの棒術とは少し違うところがあり、特に中棒の動きに特徴がるように思う(上里さん)。どこから伝えられたのかは不明。
当該行事における意味
- 行事の中での演武(舞)の位置とその意味(戦前、戦後、復帰後の変化)
- 豊年祭の芸能は、公民館前の路上から、ウプザーと呼ばれる辻道に向かいながら披露する。順序は、1シシ舞い 最初に青年によるシシ舞いがある。シシ舞いが厄をを祓い、「道を開ける」。2棒術 10名の青年による棒術。棒術も邪気を祓う意味があるという。3ザヤ踊り。壮年の男性による踊り。ザヤは棒の先に房をつけたもので、これを持って踊る。4ヒキ踊り。女性による踊り。この時はクバ扇を持って踊る。5ウプザーでの綱引き。これは中学生らツナシードゥ(綱勢頭)が中心になって行う。昔は綱引きは別日に行っていたが、子供の数が減ったため、豊年祭のプログラムに組み込んで一緒にやるようになった。6クイチャー。参加者全員でのクイチャーで終了となる。
組織・指導者・伝承方法
- 組織
- 1青年会。青年会が棒術を担当していた。棒術は10名1組。以前は2組あったが、若者が減って1組になった。いつ頃から変わったのかは不明。棒の編成は5名(前棒2名・中棒1名・後棒2名)×2。他にナリモノ(横笛1名・鉦1名・太鼓2名・ホラ貝4名)の役がある。棒術は高校卒業後に加入し、25歳頃まで活動していたが、近年は人が少ないため30歳代もやっている。長男次男の関係はなく、地元に残る青年は皆棒術やシシ舞いを担当した。2保存会 現在もシシ舞いと棒術は青年たちが担当するが、特に保存会と協力しながら実施している。「新里民俗芸能保存会」は、豊年祭で行う芸能全般を保存継承する目的で作られた。結成時期は不明。現会長は上里雅章さん。現在会員は30名余りで、年配の経験者が多い。年間の活動としては、5月頃に総会があり、他に毎月のモアイをしている。豊年祭の芸能は保存会が中心になって指導する。
- 組織の特化
- ■武術の部分に特化した組織がある(保存会設置) 「新里民俗芸能保存会」
- 各組織の役割等(戦前、戦後、復帰後等の変化についても)
- 以前の棒術は2組(10名×2)あったが、現在は1組でやっている。私(上里さん・昭和29年生)が若い頃は2組あった。いつ頃から変わったのかは不明。
- 指導者の氏名(さかのぼるまで)
- 以前保存会の会長をしていた新里氏さんが芸能に詳しい。他にも保存会のなかの芸能の経験者たちが指導をしている。
- 出演者の状況・条件(年齢・性別/戦前・戦後・復帰後)
- 棒術は青年男性が担当する。かつては18歳から25歳頃までの青年がやっていたが、現在は人数の減少もあり、30歳代の人も棒術をやっている。またナリモノについて、特に笛と鉦は熟練者が担当している。
稽古の仕方、期間
- 稽古のスケジュール(戦前、戦後、復帰後等の変化についても)
- 豊年祭の日取りが決まったら保存会にも連絡がある。稽古は祭り当日の1週間前あたりから、新里公民館で行う。棒の青年だけでなく、シシ舞い、男性の踊り、女性の踊りなどの練習をする。保存会の人たちも稽古に参加して指導する。近年では青年が少なくなったので、小中学生も練習に参加させて育成している。
- 稽古の場所(戦前、戦後、復帰後等の変化についても)
- 新里公民館で練習する。
演舞(武)構成
- 演武(舞)構成 (芸態)(現状を含む)
- 棒術は10人で1組。基本は5人棒×2で10人になる。ナリモノが先頭になる。5人棒の場合は、前棒2人・中棒1人・後棒2名の編成が2つ続く形になる。さらに、途中で前方2人・中央5人・後方3人の編成に変わって棒を打つ場面がある。
- 集落以外での披露の有無
- ■集落以外(市町村内)で演武したことがある ■公民館やホールなど(市町村外)で演武したことがある
衣装・道具
- 衣裳・道具の名称と着方
- 棒振りの衣装は、黒色の上着、下は白色のステテコ(現在は白色のズボン)で揃えている。頭部に白色の鉢巻き、上体に白色のタスキ(襷)とオビ(帯)、足にはキャハン(脚絆)をつける。履き物はなく裸足で演舞をする。棒は径3㎝長さ44㎝。ただし中棒役は棒を回す都合から、他より少し短い棒を使用する。
- 衣裳・棒、他の用具の管理と時代の変化について(戦前、戦後、復帰後等の変化について)
- 衣装は同じものを各自が持っている。
- 衣裳・棒、他の用具の修繕や製作、購入の方法(担当、方法、経費など)
- 衣装は購入品だが、購入先は不明。棒は「宮古木工芸」という業者に作ってもらった。
- 棒など用具の材質(戦前、戦後の変化)
- 棒の材質はヤラブの木。本来はクロキがいいと聞くが、手に入らないので堅いヤラブの木を用いている。
音楽
- 楽器の内容と呼称、各楽器の演奏者数と時代の変化について(戦前、戦後、復帰後など)
- ナリモノは、横笛1名・鉦1名・太鼓2名・ホラ貝4名。
- 楽曲(戦前、戦後の変化)
- 得意な人に歌ってもらう。
課題
- 支援してもらいたいことや困っていること(今後の継承等課題等)
- 後継者不足が一番の課題である。近年は小中学の子供の数も減ってきている。また村落外から来た住民のなかにはあまり行事や芸能に興味を持たない場合もある。
- コロナで影響を受けたこと
- 2020年から2022年まで棒術と踊りを休止。2023年から再開した。


